特許は特許法によって、実用新案は実用新案法によって定めされています。
これらは、共通するところがたくさんがありますが、もちろん相違するところもたくさんありあます。
今回は、これらの相違点について、保護対象、手続き面、費用、権利機関、権利行使の観点から説明します。
対象
特許と実用新案ともに、技術的思想(技術アイデア)を保護対象としています。
この技術的思想は、特許の場合では、「発明」と呼び、実用新案の場合では、「考案」と呼びます。
実用新案における考案は、物品の形状、構造、これらの組合せに限られます。すなわち、形があるものに限られます。
特許における発明は、形あるものに限らず、たとえば、コンビュータのプログラム、材料そのもの(薬、プラスチック材料など)、方法(物の製造方法、使用方法など)といったように形のないものでもよく、保護対象が広範囲に及びます。
なお、特許は、技術思想のうち高度なもののみ、実用新案は、高度なもの・低度なものの両方を保護対象にしていますが、実際上は、ほとんど変わらないようです。
手続きの違い
特許は、特許権を取得するために、特許出願→出願審査請求→拒絶理由通知への対応(必要ない場合もあります)→登録料納付といった手続きが必要となります。
また、特許庁による審査にクリアしないと、特許権を取得できません(審査クリア率はだいたい50~60%です)。
一方、実用新案では、実用新案登録出願(登録料も同時納付)すると、原則、登録されて実用新案権を取得することができます(ほぼ100%登録になります)。
すなわち、一度の手続きで、実用新案権を取得することができます。
特許庁に支払う費用の違い
特許は、その内容によって大きく変わりますが、だいたい、出願料15,000円、出願審査請求料12~20万円、登録料(3年分)7,500~20,000円くらいになりますので、最低15万円はかかります。
実用新案は、出願料14,000円、登録料(3年分)6,600~10,000円くらいになりますので、2万5千円もあれば十分です。
権利期間
特許権は、出願の日から原則20年、
実用新案権は、出願の日から10年となっています。
権利行使の違い
権利化後は、特許・実用新案ともに、第三者に差止請求、損害賠償請求などの権利行使ができます。
特許については、権利行使に法律上の制限はありません。極端な話では、特許権を侵害する第三者に対していきなり裁判所に提訴することができます。
しかし、実用新案については、制限があります。
具体的には、まず、実用新案評価書を特許庁に請求して受け取った後に、その実用新案評価書を第三者に提示して警告する必要があります。その後に、初めて提訴することができます。
また、特許庁から受け取った実用新案評価書の内容には、考案について否定的な評価が書かれる場合があります。
このような実用新案評価書をもって、第三者に警告して被害(販売の中止や風評による被害など)を与えてしまうと、警告した者が、逆に、損賠賠償金を支払らなければならない事態に陥ることがありませんので、注意が必要です。
おすすめ
特許か実用新案か迷ったら、特許をお勧めします。
費用については、特許にデメリットがありますが、実際に権利行使する際の使い勝手の良さ、ネームバリューなどの観点から、断然、特許の方が良いです。
人によっては、実用新案に価値を見出さない場合もあります。
単に「実用新案登録済み!」などウリ文句を欲しいだけなどの特殊な場合は、実用新案でも良いかもしれません。