付記弁理士(ふきべんりし)とは、弁理士の中で、特定侵害訴訟(特許、実用新案、意匠、商標などの権利侵害)に対して訴訟代理人になれる人を言います。
弁理士法6条の2(平成14年改正、後述)に規定されています。
訴訟の種類
弁理士が携わる特許などの訴訟には、大きく分けて、審決取消訴訟と侵害訴訟との2種類があります。
審決取消訴訟は、特許庁の審決(拒絶査定不服審判、特許無効審判などの審決)に対して、審決の取消を求める訴訟で、被告は、特許庁長官だけです。
侵害訴訟は、特許権や商標権などの権利を侵害する他人(たとえば、会社)に対して、その行為の差し止めや損害賠償を求める訴訟です。
一般的に、弁理士は、審決取消訴訟に対しては、訴訟代理人になれますが、侵害訴訟については弁護士しか訴訟代理人になれず、弁理士は、弁護士を補佐する補佐人にしかなれません。
しかし、この付記弁理士になれば、侵害訴訟であっても訴訟代理人になることができます。
弁護士と共同出廷
ただし、付記弁理士単独で侵害訴訟の代理人になれるわけではなく、弁護士との共同という条件で、訴訟代理人になれるだけです。出廷も原則、弁護士と共同にしなければなりません。
例外的に、裁判所が認めた場合は、単独で出頭できます。
実際のところ、付記弁理士になったとしても、訴訟の際の肩書きが「補佐人」から「訴訟代理人」に代わっただけで、弁理士が行う業務についてはほとんど変わっていないようです。
付記弁理士になるためには
まず、日本弁理士会が行っている研修(約45時間)を受講します。
受講後に、特定侵害訴訟代理業務試験を受験して合格する必要があります。
研修は、原則欠席が認められておらず、毎回の講義で課題が出されます。
費用は、研修費用、登録費用などを含めて、20万少々かかります。
試験の合格率は、2013年で43%です。
弁理士法第6条の2
第六条の二 弁理士は、第十五条の二第一項に規定する特定侵害訴訟代理業務試験に合格し、かつ、第二十七条の三第一項の規定によりその旨の付記を受けたときは、特定侵害訴訟に関して、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、その訴訟代理人となることができる。
2 前項の規定により訴訟代理人となった弁理士が期日に出頭するときは、弁護士とともに出頭しなければならない。
3 前項の規定にかかわらず、弁理士は、裁判所が相当と認めるときは、単独で出頭することができる。