日本で特許権は取得するが、果たして外国でも特許権を取得する必要があるでしょうか?
特許権の効力は、国ごとに独立しています。
したがって、日本で、発明Aの特許出願をして、日本での特権権を取得した場合、日本国内においては、他人の製造・販売を阻止することはできます。しかし、日本での特許権では、外国での製造・販売は阻止できません。
外国でも他人の製造・販売を阻止したい場合は、その国ごとに特許出願をして、特許権を取得する必要があります。
外国出願を依頼するには
一般的には、日本国内の特許事務所に依頼します。
そうしますと、日本国内の特許事務所→ 外国の特許事務所→ 外国特許庁 といった流れで、出願準備・作業が進んでいきます。
ちなみに、いきなり外国の特許庁に書類を提出するということは原則できません。
海外からの出願には、特許庁からの書類の郵送上の便宜から、その国の特許事務所を介しなければいけない規則があるからです。
日本国内の特許事務所を経由せずに、外国の特許事務所を依頼する方法もありますが、言語(英語かその外国の言語)、外国の特許法を理解したうえでの専門的なやりとりをしなければならないため、この方法は日本の大会社でもあまりしないのが現状です。
日本国内の特許事務所に依頼すれば、丁寧なサービスが受けられ、手間もさほどかかりませんので、日本国内の特許事務所に依頼することを強くお勧めします。
外国出願を検討する時期
外国出願は、日本の出願日から1年以内にするのが一般的です。
そうすれば、専門的になりますが、優先権主張という制度を利用でき、
たとえ、外国出願した日が、日本の出願日よりも実際上は遅くなっても、法律上は、その日本の出願日にしたものと扱われるからです。
外国出願する場合は、どんなに遅くても、日本の出願日から1年半以内にしてください。
なぜなら、日本の出願日から1年半後にその内容が公開されますが、その公開以降に外国出願した場合は、特許権が取得できないからです。
もし日本出願を日本の特許事務所に依頼している場合は、日本出願の際に、外国出願の件も必ず伝えておくことをお勧めします。
そうしますと、日本の特許事務所が、外国出願の締切日などを所定の時期に連絡するサービスをしてくれます。
外国出願の費用
外国出願には、日本出願の何倍も費用がかかります。
まず、外国の言語に翻訳しなければなりませんので、翻訳費用がかかります。
また、日本国内の特許事務所の手数料、外国の特許事務所の手数料がそれぞれかかってきます。
一般的に、出願だけで、1件1カ国で数十万円という高額な費用がかかります。
出願以降の特許庁からのやり取り(中間アクションなど)にかかる手数料を含めると、特許権の取得まで、100万円以上かかるのが通常です。
特に、アメリカでは、アメリカの特許事務所の手数料が、他と比較すると割高となっており、特許庁に対するやり取りも多くなりがちですので、より高額となります。
したがって、外国での特許権を取得したい場合には、外国出願するか否か良く吟味する必要が出てきます。
外国出願するときの指標
以下に、外国出願する際の指標をいくつか挙げてみますので、ご参考にしてください。
・出願する発明が、会社にとって非常に重要な技術やコアとなる技術であるか、または、改良特許であるか
・外国に自社の製造拠点(工場)があるどうか
・ライバル企業の本社や製造拠点があるかどうか
・市場規模が大きいか否か
・他社の侵害を監視・発見できる状況か否か
・特許などの知的財産を順守する国柄か否か
一般的に、アメリカ、ヨーロッパ(EP)、中国、台湾、韓国などが多いようです。
国数としては、医薬品などの分野では数十各国出願することもありますが、それ以外の分野では、1~3カ国ぐらいが多いです。
以前は、アメリカが必須で、ほかにプラスアルファでヨーロッパ、中国などを追加していくという傾向でしたが、
最近は、中国が必須で、ほかにアメリカなどを追加していくという傾向が見られます。
半導体関連の技術では、台湾を必須にしている場合もあります。