今回は、第9話と第10話(最終話)です。今回は、侵害訴訟と冒認出願がメインのテーマです。月夜野食品の新商品「カメレオンティー」に関する技術を出願せずに、ノウハウとして秘匿。しかし、その技術をライバル企業ハッピースマイルが特許取得して、その特許を元に月夜野食品に警告し、侵害訴訟へと発展。ところが、その特許は、月夜野食品の営業社員である五木(渡辺大知)からハッピースマイルの社員である篠山瑞生(秋元真夏)に不正に渡した技術に基づいた冒認出願であることを、亜希(芳根京子)が知る。その冒認出願を証明するため、亜希は、証拠探しに奮闘する一方、北脇弁理士(重岡大毅)は、侵害訴訟に対応を追われる。詳しい内容は、公式HPそれってパクリじゃないですか?|日本テレビ (ntv.co.jp)をご覧ください。
つっこみどころ1
新商品の発売前に、月夜野食品への警告なんてあり得ない!
ハッピースマイルは、月夜野食品のカメレオンティーの新商品発表のイベントの前に、警告書を送付しています。カメレオンティーを入手していないはずなのに、どうやってカメレオンティーの商品が、ハッピースマイルの特許を侵害していると分かったのでしょうか?
つっこみどころ2
大発明はノウハウにせず、特許取得するのが一般的です。
月夜野食品の新商品「カメレオンティー」に関する技術を出願せずに、ノウハウとして秘匿しています。月夜野食品は、カメレオンティーの味や色が変わる技術を大発明と認定していますし、カメレオンティーを社運をかけて販売します。そのような重要な技術を秘匿するのはリスクがあり過ぎます。また、ケンタッキーなどを例にしてノウハウにすることを説明していますが、ケンタッキーの技術などは、分析技術が未熟だった大昔の話です。現在の発展した分析技術であれば、大発明と言われる技術は簡単に丸裸にされますので、特許出願します。ノウハウによる秘匿も知財部の手段としてはありますが、それでも、大発明に関する基本的な技術については特許出願して、細かい技術についてのみノウハウ化するのが一般的です。
つっこみどころ3
又坂弁理士は、月夜野食品に居座り過ぎです。
1~10話を通じて、又坂特許事務所の又坂弁理士(ともさかりえ)は、月夜野食品にしょっちゅう顔を出し、月夜野食品の知財部の席で作業したりしています。しかし、顧問弁理士と言えども、外部の人間です。知財部の中に入ったり、知財部の席で作業しありして、べったりすることはありません。月夜野食品は、知財部が3人(部長、亜希、北脇)だけであり、知財案件が多くないので、特許事務所の弁理士が、その企業一つにそんなに時間をかけている余裕はありません。特許事務所の弁理士として食べていけません。
最後に
それパクは、知的財産に関する初めてのドラマということもあり、全部拝見させていただきました。いろいろツッコみましたが、総じて、知的財産の実務をリスペクトして、でき得る範囲で忠実に描いていると思いました。ドラマとして面白くするために、ある程度、実際とは異なる設定になるのは当然ですし、その中で、知的財産の仕事内容を具体的に説明してくれたのは、弁理士として、嬉しい限りです。ただ、その反面、真面目に(堅く)なり過ぎてしまい、ドラマ全体としてはストーリーに面白みに欠けるところがあったのは、視聴率的にも、事実かなと思います。
知的財産の仕事に携わっている身としては、今後も、知的財産を絡めたドラマなどが出てきて、知的財産の仕事や内容が周知されることを願っています。
ちなにみ、知的財産をテーマとした小説として、「特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来」(南原 詠著、宝島社)があります。これは、2022年第20回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。ドラマっぽいストーリーになっていますので、今回、知的財産に興味が出た方はこの小説をお薦めします。