いきなり、ライバル企業や知らない企業から、警告状が届いたらどうしますか?
何の準備もしていないと、慌てたり、適切な対応ができなくなったりします。
こんな時はどうすればよいのか、説明します。
警告状の内容
警告状には、
「以下の通り、警告申し上げます。」
「貴社商品は、特許○○○号の権利を侵害しているため、販売停止・商品在庫の廃棄、損害賠償を求めます。」
「○日以内に、販売時期、販売数量、販売金額を書面により回答してください。」
「誠意ある対応がない場合は、訴訟提起を検討せざるを得ません。」
などの厳しい文言が、記載されています。
また、送り主としては、弁護士や弁理士の名前(代理)で送ってくる場合もしばしばあります。
警告状を無視してはいけません
単なる脅しだと思って、いきなり無視することは良くありません。
警告状の通り、実際に訴訟されて、それこそ慌てふためくことになりかねません。
特許権者の確認と、特許権が存在しているかの確認
まずは、警告状には、警告の根拠となる相手方の権利が記載されています。
具体的には、特許番号○○○○○号と記載されています。
①相手方が、その権利の正当な特許権者か否かを確認します。
②その特許権が存続しているか、消滅しているかを確認します。
特許庁のサイト(特許情報プラットフォーム)で確認できます。
例えば、特許公報の欄で特許番号を入力し、「経過情報」→「登録情報」へと進みます。
権利者記事に、特許権者が記載されています。
登録記事に、年金の納付状況が記載されています。
これによって、正しい特許権者や、特許権の存続か消滅かも判明します。
例えば、存続期間満了日を過ぎていたり、年金が払っていない場合は、特許権利が消滅していて、「権利消滅日」が記載されています。
より正式な書類として、特許原簿などを取り寄せて確認することもあります。
もし、特許権消滅になっていれば、根拠がなくなりますので、相手方に「貴社の特許権は消滅しているから、貴社の主張に理由はない」などの趣旨の回答書を送り付けます。
特許権の侵害の判断
権利が有効であったら 特許権を侵害しているか否かを検討します。
具体的には、自社の商品が、相手方の特許権の「特許発明の技術的範囲」に入るか否かを判断します。
まずは、特許公報などを取り寄せましょう。特許庁のサイト(特許情報プラットフォーム)でダウンロードできます。
特許公報の「特許請求の範囲」を見ます。
特許請求の範囲に記載されている構成(要素)の全てに、自社の商品が当てはまるか否かを判断します。一つでも当てはまらない構成がある場合は、相手方の特許発明の技術的範囲に入りませんので、特許権を侵害していないことになります。
もし、相手方の特許権を侵害していない場合は、相手方に「当社商品は、特許○○○号の特許発明の技術的範囲に属せず、貴社の特許権を侵害していないから、貴社の主張に理由はない」などの趣旨の回答書を送り付けます。
特許権を侵害していたら
出典:http://gogon.net/
①先使用権があるか否かを確認します。
相手方の権利の出願日前から、商品を継続して販売していれば、その後も継続販売する権利(先使用権)が発生しますので、この先使用権があるか否かを確認します。
②無効理由があるか否かを確認します。
相手方の権利に、無効理由があれば、その権利は無効となりますので、相手方は権利を主張できなくなります。無効理由としては、新規性、進歩性などがあります。無効理由の根拠となる資料(文献)を調査して見つけ出します。
③商品販売の停止、設計変更(商品の変更)を検討します。
①や②を確認したが①②を見つけ出せない場合は、警告の対象となっている商品を一旦停止したり、商品の設計やデザインを変更することを検討します。
これ以上の損害額の発生を避けることができます。
ただし、今まで販売した分については、損賠賠償が請求されます。
④使用許諾(ライセンス)を検討します。
①や②を確認したが①②を見つけ出せない、しかし、それでも、商品を継続して販売したい場合は、
相手方と交渉してライセンス料を払う代わりに継続販売を認めてもらう方法もあります。
専門家に相談
権利を侵害していた場合の①と②の判断については、高度な知識と判断が必要となります。
慣れていない人が、勝手に判断すると間違える可能性が十分にあります。
知財を専門とする弁護士か、弁理士に相談するのが一番です。
おすすめ(慌てないための秘策)
それは、回答期限を延ばしてもらうことです。
相手方の提示している期限は、警告状を受け取った日から、10日以内や14日以内などと、タイトな時期が書かれています。
ただ、相手方も、その期限を一応の目安として記載されているのであって、その日を過ぎたら、いきなり訴訟提起するものではありません。
訴訟は、時間もお金も労力もかかるものですので、相手方としては、訴訟せずに、話し合いで済ませたい場合が多いです。
したがって、相手方に電話や回答書などで、検討に時間がかかるから1ヶ月くらい待ってほしい旨を伝えてください。
大方は待ってもらえると思います。
期限が伸びると精神的にゆとりが出るはずです。
そして、その間に信頼できる専門の弁護士や弁護士を探します。
無視したり、慌てて回答書を送ったりしないでください。