今回は、マルチクレームやマルチマルチクレームについて、外国の取り扱いを説明します。
マルチクレームやマルチマルチクレームとは?
マルチクレームとは、「多項従属請求項」の意味であり、下位の請求項が上位の請求項を2つ以上引用する記載形式の請求項(クレーム)のことを言います。
マルチマルチクレームとは、「多項引用請求項を引用する多項引用請求項」の意味であり、マルチクレームを引用し、さらに、自らもマルチクレームの形式である請求項を言います。
具体例
例えば、下記の特許請求の範囲があったとします。
【請求項1】A、BおよびCを備える、装置。
【請求項2】Dをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】Dがdである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】Eをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】Fをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】Gをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
請求項4は、上位の請求項(請求項1、2、3)を引用しているので、マルチクレームです。
請求項5は、マルチクレーム(請求項4)を引用し、さらに、自らもマルチクレームの形式(「請求項1~4のいずれか一項に記載の…」)となっていますので、マルチマルチクレームになります。
同様に、請求項6もマルチマルチクレームになります。
ちなみに、請求項2や請求項3は、通常の従属請求項です。
各国の扱い
国によって、マルチマルチクレームを許容していなかったり、マルチクレームに対して追加の手数料が必要となる場合があります。
各国の取り扱いを下記の表にまとめました。
マルチクレーム | マルチマルチクレーム | |
日本 | ○ | ○ |
米国 | ○(注) | ×(US特許法112条,MPEP608.01(n) ) |
EP | ○ | ○ |
中国 | ○ | ×(特許細則規則23(2)) |
韓国 | ○ | ×(施行令第5条第6号) |
台湾 | ○ | ×(施行規則第18条第5項) |
インド | ○ | ○ |
ロシア | ○ | ×(行政規則10.8.1) |
カナダ | ○ | ○ |
ブラジル | ○ | ○ |
オーストラリア | ○ | ○ |
タイ | ○ | ○ |
シンガポール | ○ | ○ |
インドネシア | ○ | ○ |
マレーシア | ○ | ○ |
ベトナム | ○ | ○ |
フィリピン | ○ | ×(発明に関する規則415(c)) |
カンボジア | ○ | ○ |
ミャンマー | ○ | ○ |
ラオス | ○ | ○ |
南アメリカ | ○ | ○ |
(注)マルチクレームが一つでもあれば、マルチクレームの多少に関係なく、$780追加料金が発生します(37CFR 1.16(j))。