特許庁の審査を進めて、早く特許にすることができます。
今回は、外国出願の場合を説明します。
外国での審査を早める場合
特許審査ハイウエイ(PPH: Patent Prosecution Highway)を利用します。
特許審査ハイウェイとは、複数の国に外国出願している場合に、A国で特許可能と判断された発明の出願について、出願人の申請により、B国において簡易な手続で早期審査が受けられる制度です。
具体的には、日本で特許可能となった出願があった場合に、その対応外国出願(例えば、対応中国出願)について、簡単な手続きで、その外国(例えば、中国)で早期に審査してもらえる制度です。
外国の特許制度では、日本みたいな早期審査制度がなかったり、早期審査制度は存在するが実質的に機能していなかったりして、早期に審査してもらえない国があります。そうした国でも、このPPHを利用すれば、早期に審査してもらえる便利な制度です。
3つのタイプ
- 従来型PPH
- PCT-PPH
- PPH MOTTAINAI(PPH モッタイナイ)
ここでは、日本出願を優先権主張の基礎にして、PCT出願やパリルート出願した場合(例えば、米国、中国)を仮定して記載します。
1.従来型PPH
第1庁(基礎の出願をした国の特許庁:仮定の場合は、日本特許庁)が、特許可能と判断された場合に、PPH申請すると、第2庁(PCT移行国の庁、例えば、米国特許庁USPTOや中国特許庁)で、早期審査してもらえます。
第1庁の結果に基づいてしか、PPH申請できませんので、注意してください。
例えば、米国で特許可能と判断された場合でも、米国の結果に基づいて、日本や中国にPPH申請することはできません。
2.PCT-PPH
これはPCT出願の場合のみ利用できます。
国際調査機関や国際予備審査期間が作成した見解書(WO/ISAやWO/IPEA)において、特許性ありと認められた場合、移行国に対して、その見解書を提示することにより、早期審査してもらえます。
要するに、PCT出願のサーチレポート(国際調査報告)で、X文献やY文献が発見されなかった場合(すなわち、新規性・進歩性ありと判断された場合)に利用できます。
3.PCT MOTTAINAI (PPT(M))
これは、従来型PPHの拡張バージョンです。従来型PPHは、第1庁の審査結果に基づいてしか、第2庁以降に対してPPH申請できませんでした。
しかし、このPCT MOTTAINAIは、第1庁の審査結果ではなくても、第2庁以降の庁の審査結果に基づいて、PPH申請できます。
例えば、米国で特許可能と判断された場合に、米国の結果に基づいて、日本や中国で、PPH申請できます。
注意点
PPH申請する場合、PPHの元となる出願と対応するように、特許請求の範囲を補正する必要があります。
どこまでを対応するか、完全に一致するか、またはある程度の対応でよいのかは、各国の判断によって異なりますので、現地代理人に確認することをお勧めします。
また、申請書類やその書式の異なりますので、これも現地代理人に確認してください。
1.~3を採用している国と採用していない国があります。
具体的には、こちらに載っていますので、ご参照ください。
*ちなみに、PPH制度は、日本特許庁の提案により、作られた制度です。
したがって、PPH-MOTTAINAIなどの名称になっています。