(画像:水戸徳川家2代目藩主、水戸光圀(水戸黄門)像)
水戸徳川家の「葵の家紋」に類似したマークの商標登録が、水戸市のイベント会社に対して、与えられました。
そのため、水戸徳川家の15代当主(徳川斉正氏)が理事長をされている公益財団法人「徳川ミュージアム」が、
特許庁に、イベント会社の商標登録を取り消すよう異議申し立てをしました。
現在、特許庁は、取り消すか否か審理中です。
問題となっている商標登録は、商標登録第5810969号(登録日:平成27年12月4日)です。
どのくらい似ているのか
左側は、イベント会社の商標登録されたマークです。
右側が、徳川ミュージアムが以前から使用している葵の家紋です。
かなり類似しています。
一見すると、まったく同じように見えます。
インターネット上では、「こんなそっくりのマークを商標登録するなんて特許庁は審査していないのでないか」という意見も散見されていますが、特許庁はしっかりと審査しています。
商品または役務(サービス内容)も似ているかが重要
商標登録されるには、2つのポイントがあります。
1つ目は、マークが似ているかどうか
2つ目は、そのマークを使用する商品やサービス内容が似ているかどうか
1つ目については、2つのマークは、だれの目から見ても似ていますね。
疑う余地はないと思います。
2つ目はどうでしょうか?
イベント会社の商品・サービス内容
・お守り、御札、護符
・日本酒
・映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行の企画又は運営、
演芸の上演、演劇の演出又は上演,音楽の演奏、大神楽の上演,
放送番組の制作,音響用又は映像用のスタジオの提供,
娯楽施設の提供、興行場の座席の手配、楽器の貸与
徳川ミュージアムの商品・サービス内容
徳川ミュージアムも、葵の御紋の商標登録を持っています。
登録番号で、5547305,5547306,5547307,5588845、5588846、5588847、5669952、5669953などです。
商標登録の商品やサービス内容は、
飲食物の提供、会議室の貸与、展示施設の貸与、
技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,
電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,美術品の展示,庭園の供覧,
洞窟の供覧,書籍の製作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作,
映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,
録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,書画の貸与
しかし、日本酒やお守り、演芸の企画・上演などは、ありません。
したがって、商品やサービス内容が異なる点を重要視して、特許庁は商標登録をしたと考えられます。
イベント会社も、一部の商品を諦めています。
イベント会社は、出願した際は、日本酒以外にも「洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」も希望していました。
しかし、特許庁からの拒絶理由により、これらを削除しました。
この結果、商標登録されています。
これは、徳川ミュージアム以外にも、株式会社シー・エー・エルが、葵の御紋の商標登録(第4470509号)を持っています。
その商標登録の商品「洋酒,果実酒,中国酒」でしたので、これとの重複を避けたものと考えられます。
イベント会社とは
株式会社ヤナギヤ(柳貴家勝蔵芸能事務所)です。
大神楽の上演などをメインにしている会社です。
大神楽とは、獅子を舞わせて悪魔払いなどを祈祷する神楽の一種を言います(ブリタニカ国際大百科事典)。
水戸藩徳川家御用神楽の継承者として、水戸大神楽 総本家15代家元 柳貴家 勝蔵氏が、いらっしゃるようです。
水戸大神楽 総本家 柳貴家勝蔵社中は 「水戸市 無形民俗文化財」及び「茨城県 無形民俗文化財」に指定されているとのことです。
大神楽をしている老舗のようです。
ホームページから察すると、悪意で商標登録をしたのではなく、
真面目に株式会社ヤナギヤが長年商売しているマーク(葵の御紋)を保護したいという観点で、商標登録をしたものだと思います。
感想
葵の御紋がついたお守りや日本酒などは、大神楽を商売とする会社以外のものも販売することがあると思いますので、
水戸徳川家ゆかりのものでもない会社が独占するのはよくないと思います。
商標登録を認める商品やサービス内容の範囲が、広すぎると感じます。
大神楽に関するやそれに近い商品やサービスに限って、商標登録を認めておけば、問題はなかったような気がします。
さて、特許庁の判断が、どうなるのか楽しみです。