日本出願をしていて、その日本出願をパリ優先権主張の基礎として出願する場合、
日本出願の日から、1年以内に外国出願(PCT出願含む)をする必要があります。
あってはいけないことですが、うっかり1年の期限を過ぎてしまう事態があるかもしれません。
今回は、その際の救済方法について説明します。
PCT出願での場合と、個別に外国出願する場合の2つに分けて説明します。
PCT出願の場合
徒過した場合でも、2か月以内(すなわち、先の日本出願の出願日から1年2カ月以内)にPCT出願すれば、救済されます。
所定の条件を満たせば、所定の国においては、パリ優先権を回復できます。
所定の条件とは、
徒過の理由が、
①「故意ではない場合」、または、
②「相当な注意を払った場合にもかかわらず生じた場合」です。
うっかり徒過の場合は、故意ではない基準の場合に該当します。相当な注意の場合ではありません。
相当な注意を払った場合とは、下記のとおりです。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/pdf/pct26-2_3_yusenken/rogl_kariyaku.pdf
所定の条件の基準は、各国によって、異なっています。
①「故意ではない場合」を採用している指定国は、米国など
②「相当な注意を払った場合」にしている指定国は、日本、EPCなど
なお、ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、キューバ、チェコ、ドイツ、アルジェリア、インドネシア、インド、韓国、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、トルコの15カ国は、現時点では、この救済規定の適用を除外していますので、救済はありません。
PCTでは、受理官庁と、指定国の両方が、所定の条件を満たすことが必要。
うっかり徒過で救済措置を受けるには、
PCT出願を受け取る受理官庁と、国内以降する指定国(選択国含む)との両方が、①の条件を採用している必要があります。
日本の場合、受理官庁として、日本国特許庁と、国際事務局とのいずれかを選ぶのが一般的です(ほとんど日本国特許庁)。
しかし、受理官庁としての日本は、②「相当な注意を払った場合」を基準にしています。
一方、国際事務局は、故意ではないを基準にしています。
したがって、国際事務局を受理官庁にして、PCT出願する必要があります。
また、指定国としても、①の基準を採用する必要があります。
PCTの出願のまとめ
受理官庁として、国際事務局にPCT出願し、かつ、米国などの国に関して国内移行する場合に限り、
その国で救済措置を受けることができます。
なお、権利回復書などの書類を国際事務局などに提出することも必要です。
個別の外国出願の場合
原則、PCT出願と同様になっています。
・故意ではない基準に、徒過後2か月以内での救済
米国(37CFR.1.78(b))など
・相当な注意を払った場合を基準に、徒過後2カ月以内での救済
EPC(EPC122条、規則136(1))、日本など
・救済措置が無し
台湾、中国、韓国など
まとめ
(1)うっかり徒課した場合の救済可能な国(2カ月以内)
米国など
(2)相当な注意を払った場合に救済可能な国
EPCなど
(3)救済不可能な国
中国、韓国、台湾
なお、(2)(3)の国の場合は、日本出願が公開されていない場合は、
早急に、優先権主張を伴わない通常の外国出願(PCT出願含む)をする必要があります。