今回は、第3話です。今回は侵害予防調査がメインのテーマです。主人公である知財部員「藤崎」(芳根京子さん)が、自社開発品カメレオンティーが、他社の特許権を侵害しているかどうかを調査したり、また、先輩が開発しているスムージーが他社の特許権を侵害しているので、回避する方法を模索することがあらすじとなっています。詳しい内容は、公式HPそれってパクリじゃないですか?|日本テレビ (ntv.co.jp)をご覧ください。今回は、藤崎知財部員の侵害調査の進め方・判断が、おおきなツッコみどころです。
ツッコみどころ1
カメレオンティーは、飲んでいる最中に、色や味が変わります。藤崎部員は、それを特許庁が運営している特許情報プラットフォーム(J-プラットパット)で調査しています。それは、実務ではそうですが、藤崎部員は、「簡易検索」で調査しています。しかも、文章単位で入力して、検索しています。これは、有り得ません。例えば、「色が変わる」で検索すると、同意義である「変色」や「色が変化する」などなどが、調査結果から漏れます。いくら初心者だからと言って、これはあり得ません。上司である北脇弁理士や、部長に相談すれば(むしろ見ているはずなので)、すぐにやり方を変えるべきです。案の定、ヒット件数が、ゼロとなっています。一般的には、「特許・実用新案検索」で、検索キーワードを「変色」、「変」AND「色」などを入力したりして、幅広く類似語をヒットするようにしていきます。
つっこみどころ2
スムージーが、とある特許権に侵害しているため、先輩は、そのスムージーの配合成分を変更し、見事美味しくて、特許権侵害を回避することに成功します。その際、藤崎部員は、スムージーの構成要件が、A、B、Cから、A、B、Dに変更されるため、その特許権を回避できると説明しています。それは、一般的に正しいです。具体的には、スムージーの配合を、乳成分(C)を、米成分(D)に変更しています。それを、藤崎部員は、特許公報を見ながら説明していますが、その箇所が、請求項8(請求項7の従属請求項)なのです。
これは、おかしいです。侵害しているかどうかは、特許公報において、権利範囲を決定する独立請求項(通常は請求項1)を見て判断しなければなりません。なぜなら、請求項8よりも、請求項7よりも範囲が広く、請求項8に該当しなくても、請求項7やそれよりも上位の請求項(請求項1~6)に該当しては、侵害を回避したことになりません。これは、知財の世界では、初歩中の初歩です。新人だからといって、知らないはずがないくらい基本中の基本です。なぜ、ドラマのシナリオ的にも、なぜわざわざ、請求項8をピックアップしたのか不思議でなりません。