2015年12月1日、セイコーエプソン社は、世界で初めて、水を使わずに、使用済みの紙から新しい紙を再生できる、オフィス用の小型製紙機を開発したことをプレスリリースしました。
その名も、オフィス製紙機「Paper Lab」です。
ホームページは、こちらです。
特長は、4つ!
(1)オフィス内に入る小型
サイズは、横幅2.6m×奥行1.2m×高さ1.8m(突起部を除く)です。
(2)機密文章の完全末梢
古い紙を紙繊維まで分解するため、情報を完全に抹消することができます。
これにより、外部へ委託していたり、シュレッダーで切断する手間やコストが省けます。
(3)多様な紙の生産速度
1分間に約14枚の紙を再生できます。
A4、A3サイズ、名刺、色や香り付きの紙などの多様な紙を生産できます。
(4)環境性能
一般的な製紙機は、A4の紙1枚当たり、コップ1杯の水が必要ですが、このPaper Labは、水がほとんど不要になりました。
Paper Labの技術
ホームページによりますと、Paper Labは、以下の3の技術から成り立っています。
1.「繊維化」(紙を繊維状態に戻す)
↓
2.「結合」(紙繊維同士をくっ付ける)
↓
3.「成形」(圧縮して、薄くし、所定のサイズにカット)
Paper Labの基本特許
Paper Labの特許を見てみます。Paper Labは、「シート製造装置」という発明の名称で出願しています。
2014年からで、公開分64件(2015年12月7日現在)です。
未公開の分を合わせると、推定ですが、100件以上は出願しているものと思われます。特許査定になったものは現時点ではありません。
このシート製造装置の出願の基本特許ともいえる最も早い出願は、なんと7つあります。
これらは、全て、同日(2014年2月13日)に出願されています。
・特開2014-208927
・特開2014-208926
・特開2014-208925
・特開2014-208924
・特開2014-208923
・特開2014-208922
・特開2014-208446
かなり戦略的な特許出願で、このPaper Labを保護しています。
水を使わない特許
このPaper Labの大きなメリットは、水を使わない点ですが、どうやって水を使わないようにしたかというと、機械的に強い衝撃を与えて紙を綿状の繊維に分解する技術を開発したからだそうです(セイコーエプソン社独自の技術)。
特許公報から、このような技術があるか探してみました。
繊維に分解する工程ですので、おそらく解繊部に特徴がある出願と予測できます。
解繊部に特徴がある出願は、意外に少なくて、1件(特開2015-74848)だけでした。
この出願は、下のような回転プレートを複数枚積層させることにより、紙繊維を短く切り過ぎないようにする技術です。
この出願は、衝撃を与える点については記載されていませんので、おそらく、水を使わないようにするキー技術ではないようです。
この衝撃を与える技術の詳細については、発表できないとのことですので、おそらく、その特許出願は、公開されていないと思います。
そのほかの出願
ステープラーを着けた状態の古紙からでも、再生できる特許出(特開2014-208926)があります。
ステープラーを外すのは意外に手間ですので、この技術もPaper Labに搭載されていると良いですね。