浜松市と浜松商工会議所が、共同で、
浜松市の業者と長野県須坂市の業者がそれぞれ登録している「直虎」の登録商標を取り消すよう、特許庁に異議申立てをしました。
「直虎」と言えば
来年の平成29年NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の主人公「井伊直虎」を
思い出すのではないでしょうか?
井伊直虎は、戦国時代の遠江(現在の静岡県西部)の領主であり、浜松市は、そのゆかりの地とされています。
浜松市や浜松商工会議所は、NHK大河に向けて、直虎に関連する商品プロジェクトを企画しており、
お菓子などの商品開発を浜松市内の会社に持ちかけているところです。
そのときに、2業者の商標登録がなされてしまいました。
その商標登録が「直虎」の商品プロジェクトに支障をきたすおそれがあるため、浜松市は、商標登録の異議申立てをしました。
浜松市の業者の商標登録その1
商標番号:5846107
権利者:有限会社モーク(浜松市のグラフィックデザイン会社)
出願日:平成27年12月2日
登録日:平成28年4月28日
商標 :「直虎」
指定商品:茶,せんべい,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,
ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,
ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ
須坂市の業者の商標登録その2
商標番号:5846295
権利者:糀屋本藤醸造舗(須坂市のしょうゆ製造販売会社)
出願日:平成27年12月2日
登録日:平成28年4月28日
商標 :「直虎」
指定商品:みそ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,
シャーベットのもと,穀物の加工品,酒かす,米,
脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類
須坂市の業者によれば、江戸時代の第13代須坂藩主、堀直虎氏にあやかって「直虎」を商標登録したとのことです。
ただ、NHK大河が、おんな城主直虎に決定したことが大々的に公表された後(2015年中旬)、
俳優などのキャストが続々決定しているときに出願されています。
歴史上の人物の登録可能性
歴史上の人物も、フルネームや略称(例えば、弁慶、家康など)も商標登録がなされます。
ただし、著名な歴史上の人物名については、
その人物にゆかりもない無関係の人が、その人物の名声に便乗して自分の事業に利用することは、
その人物のゆかりの地域産業に悪影響を及ぼします。
そのため、最近、公序良俗違反(商標法4条1項8号違反)として認められなくなりました。
一方、例えば、その人物ゆかりの地である公益的な機関(地方公共団体や商工会議所など)に対しては、
地域活性のために役立ちますので、公序良俗違反にはならず、登録が認められます。
また、その人物名が、著名や周知されていないければ、商標登録されます。
これらの商標は取り消されるのか?
(1)浜松市の業者の場合
浜松市の業者は、ゆかりの地である点には問題ありません。
しかし、グラフィックデザイン会社は、公益的な機関でもありませんし、
「茶,せんべい,菓子」などの指定商品を販売するかどうかあやしいです。
よって、公序良俗違反として取り消される可能性が高いと思います。
(2)須坂市の業者の場合
こちらは、かなり判断が難しいです。
「直虎」と言えば、「井伊直虎」もいれば、「堀直虎」もいます。
世間一般的に、「直虎」が「井伊直虎」であると言えるほど認識されているかどうかが問題にもなるかと思います。
そうなれば、須坂市は、井伊直虎とは、縁もゆかりもある地ではないので、商標登録が取り消されると個人的に思います。
浜松市の登録商標
ちまみに、浜松市も商標登録(5895798号)をしています。